ゲーム理論がよく分かる本の読書感想
まず、ゲーム理論とは何かというと、
『駆け引きにおいて最善の選択を考える』理論です。
その駆け引きとは、
例えば、営業マンが行うビジネスゲーム、政治家が行う政治戦略ゲーム、男性と女性で行う恋愛ゲーム。
などなどになります。
ゲーム理論そのものは経営学というジャンルなのですが、実際は経営学だけでなく、政治や宗教、戦争からビジネス、恋愛など様々なジャンルで使われています。
この本はゲーム理論を初めて見る方への入門書になっていて図解が多いのが特徴です。
様々な問題を通して解説をしていきます。
今回、私が個人的に興味深かった問題はバーニングボート、バーニングブリッジです。
バーニングボートは戦争で敵国に着いた時に船を焼く事で、バーニングブリッジは今来た道に掛かっている橋を落とす事です。
これはコミットメントと言って自分の行動を縛るやり方になります。
今回、自分の「逃げる」選択肢を消す事で相手の選択肢の「現状のまま」が消え、相手に戦うか和睦するかの2択を迫る事が出来ます。
相手はより被害の少ない和睦を選ぶと考えられ、もしも戦うを選んだら自軍は背水の陣で奮闘すると考えられるそうです。
敵地に乗り込む事が和睦を引き出す一手として使われるのに驚きました。
本に出てくる『問題』
囚人のジレンマ、チキンゲーム、共有地の悲劇、アクセルロッドの問題、参入阻止ゲーム、バーニングボート・バーニングブリッジ、ハンガーゲーム、バンクジョブ、3人の死刑囚と共有知識、レモン市場の問題、プリンシパル・エージェント問題、ホールドアップ問題、ムカデゲーム、サンクトペテルブルクのパラドックス、ヴィクレイ・オークションの戦略などなど
本に出てくる『単語』
ナッシュ均衡、インセンティブ、ゲームの木、支配戦略、ゼロサムゲームと非ゼロサムゲーム、利得表、混合戦略、協調、裏切り、しっぺ返し戦略、脅し、から脅し、バックワード・インダクション、コミットメント、最後通牒、スクリーニング、私的情報、シグナリング、逆選択、モラルハザード、アルゴリズム
問題多すぎ!って最初は思ったのですが、ゲーム理論は沢山の項目が独立せずに混ざりあっています。
例えば囚人のジレンマの話を使って囚人のジレンマはゼロサムゲーム、非ゼロサムゲームか考察が出来るようになっていたりでなるほどと思いました。
単語は、ナッシュ均衡など一見難しそうな名前ですが実はシンプルな話で、順を追って具体的な例を上げながら分かりやすく書いてあるので構えずに読んでみてもらいたいです。
オススメ
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
経済学
推定対象年齢15歳~60歳くらい
物事の考察が好きな方にオススメです。ただし内容が広く浅くなので物足りない場合もあるかも?
物語のおわりの読書感想
物語のおわり 湊かなえ
あらすじ
病の宣告、就職内定後の不安、子供の反発・・・様々な悩みを抱え彼らは北海道へひとり旅をする。その旅の途中で手渡された紙の束、それは「空の彼方」という結末の書かれていない小説だっだ。そして本当の結末とは。
背表紙から引用
同じ本を読んでも受ける感想は人によって違います。
この小説は、そこにスポットを当ててあります。
この短編が「未完結」というのがなるほど良く作られてるなって思いました。
完結した物語からもさまざまな感想は持てますが、未完結なら感想だけでなく続きに思いをはせる事が出来ます。
物語に出てくる人達は続きを考える時に今の自分を重ねて考えます。
結果、自分自身の本当の願いや気持ちに気づいていきます。
後悔、後に悔やむと書いて後悔。
私も私の後悔は何だったか、今どんな選択をしたら未来で後悔しないのかななんて想いにふけりました。
作者の湊かなえさんの魅力の1つは文体の使い分けだと思います。老若男女様々なな視点からの文体が違っていてそれがとても自然なので小説の中のそれぞれの登場人物の世界に入り込めました。
描写もとても分かりやすく、昭和中頃や北海道に居るような気持ちになりました。
⭐️⭐️⭐️☆☆
ヒューマンドラマ
推定対象年齢20歳から35歳くらい?
続きが気になって次々とめくる、止まらなくなるタイプではなく読みたい時に読みたいだけ読めるタイプだと感じました。
博士の愛した数式の読書感想
64歳の博士は17年前の事故の影響で80分のビデオテープ一本分しか記憶がストックできません。そんな博士の身の回りの世話に家政婦さんがやってきます。
作中では博士も家政婦さんもその息子さんもお互いを配慮して相手を尊重しています。
3人を繋ぐのはもちろん数学で、博士の数学への愛は博士がどんな状況でも変わりません。そんな博士を見ている2人は博士に惹かれていきます。
この話はとても暖かいです。
そして寂しくもあります。
家政婦さんも息子さんも、今博士と会ってこんなに素敵な時間を過ごしているのに明日には自分は顔も名前も知らない人になってしまいます。
小説では3人一緒に野球の観戦をしていました。
その思い出も明日には共有出来ません。
博士には自分が憧れていた野球の試合を見た感動は残りません。
3人はいったいどんな気持ちなんでしょう。
博士は毎朝目が覚めたら、自分が急に10年以上歳をとっていて、自分の記憶は80しか持たないという事実を知ります。
小説の題名にもある通りキーは数式なんです。
数式は絶対で、誰の願いや思も含まれる事なくただ一つの事実としてそこにあります。
小説の中の3人は80分しか記憶が残らない事実を受け入れて、それをどう感じてどう生きていくのか。
読む人によって感じ方が変わる一冊に思えました。
私はとても寂しい気持ちになりました。
私が大切に思う人の中で私はは消えてしまうなら?
嫌われる、喧嘩別れする、だんだん心が移る。これらは悲しいですがそれ以上に悲しく思うのは相手の中に自分の痕跡が残らず消えてしまう事だと思うので。
数式はとても美しくてロマンティックでそして残酷なほどリアリストなんだと気付きました。
印象に残った数式は
深く分からなくても数学が少し面白いなって思えました。
⭐️⭐️⭐️☆☆
ヒューマンドラマ
推定対象年齢16歳から30歳くらい?
表現や難しい言い回しが少ない軽めの本です。