博士の愛した数式の読書感想
64歳の博士は17年前の事故の影響で80分のビデオテープ一本分しか記憶がストックできません。そんな博士の身の回りの世話に家政婦さんがやってきます。
作中では博士も家政婦さんもその息子さんもお互いを配慮して相手を尊重しています。
3人を繋ぐのはもちろん数学で、博士の数学への愛は博士がどんな状況でも変わりません。そんな博士を見ている2人は博士に惹かれていきます。
この話はとても暖かいです。
そして寂しくもあります。
家政婦さんも息子さんも、今博士と会ってこんなに素敵な時間を過ごしているのに明日には自分は顔も名前も知らない人になってしまいます。
小説では3人一緒に野球の観戦をしていました。
その思い出も明日には共有出来ません。
博士には自分が憧れていた野球の試合を見た感動は残りません。
3人はいったいどんな気持ちなんでしょう。
博士は毎朝目が覚めたら、自分が急に10年以上歳をとっていて、自分の記憶は80しか持たないという事実を知ります。
小説の題名にもある通りキーは数式なんです。
数式は絶対で、誰の願いや思も含まれる事なくただ一つの事実としてそこにあります。
小説の中の3人は80分しか記憶が残らない事実を受け入れて、それをどう感じてどう生きていくのか。
読む人によって感じ方が変わる一冊に思えました。
私はとても寂しい気持ちになりました。
私が大切に思う人の中で私はは消えてしまうなら?
嫌われる、喧嘩別れする、だんだん心が移る。これらは悲しいですがそれ以上に悲しく思うのは相手の中に自分の痕跡が残らず消えてしまう事だと思うので。
数式はとても美しくてロマンティックでそして残酷なほどリアリストなんだと気付きました。
印象に残った数式は
深く分からなくても数学が少し面白いなって思えました。
⭐️⭐️⭐️☆☆
ヒューマンドラマ
推定対象年齢16歳から30歳くらい?
表現や難しい言い回しが少ない軽めの本です。